ニッポンバラタナゴの定期調査に参加させてもらいました

11/19(日)、NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会による定期調査に参加してきました。

生駒山地の麓、大阪府八尾市にはニッポンバラタナゴという淡水魚が生息しています。このタナゴ、かつては近畿のそこここで見られたそうですが、今や絶滅危惧種に指定されるほど数が減少しているとのこと。

4-5cmほどのこの小さな淡水魚は、主として灌漑用のため池に生息しています。人と自然とが有機的に共存する里山の消失とともに大きく数を減らしてしまったとのこと。

ここ八尾市高安地域は、大阪都心から電車で20分という位置にありながら、里の暮らしが守られ、結果としてニッポンバラタナゴも生きながらえることができているそうです。

とはいえその高安でも放っておいては減少の一途。そこでNPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会では、希少な魚が生息できる環境を整備するとともに、地域の子どもたちに学びの機会を提供しています。

今回参加させてもらった定期調査はその活動の一環です。

当日は朝9時に近鉄服部川駅に集合。

歴史ある佇まいを残す集落を通り抜け、歩くこと徒歩十数分。

住宅街から路地を一本入ると、突如として溜池が現れます。なるほど、絶滅の危機に瀕したタナゴは確かに人の暮らしと密接に関わっているのだと実感。溜池から上を見上げると紅葉に彩られた高安山、斜面下方を望めば高層ビルの立ち並ぶ大都市大阪が一望できます。

小学生から高校生までの子どもたちは、もうベテランの調査員。ウェーダー(胴長)に履き替えどんどんと川に入り、池の底に手を突っ込みます。

彼らが次々に採取するのは、キラキラ光るニッポンバラタナゴ…。ではなく、黒々とした貝!

実はこの美しい淡水魚は、ドブガイに産卵しその中で孵化をするという特殊な生活史を持つ魚。ゆりかごとなるドブガイなくしては繁殖が行えないのです。また、ドブガイの幼生はヨシノボリなどの魚のヒレに寄生して成長します。ニッポンバラタナゴという魚を守るには、その繁殖に欠かせない貝、そして貝の繁殖に欠かせない他種の魚を守らなければならない。詰まるところ、そうした生き物が暮らす環境全体(植生、水、水をもたらす山林、etc..)を視野に入れなければ持続的な保全はできないんですね。

NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会は、そうした観点から里山という生態系全体を俯瞰しつつ、森林整備なども行っているとのこと。

さて、僕もウェーダーをお借りし、いざ池の中へ。おそらく水温は10度を切り、ウェーダーを通しても冷たさが伝わってきます。深いところでは大人でも胸の高さまで水位があり、ちょっとドキドキ。

ドブガイの次は、いよいよニッポンバラタナゴの採取です。ここは人海戦術で、池の周りからバシャバシャと音をたて魚たちを中央部に追い込み、網で掬い上げる作戦。

生息の密度はかなり濃いようで、ひと掬いしただけでも大小さまざまなニッポンバラタナゴが網にかかります。まだ体の弱い稚魚を痛めないように、なるべく網は水面から上げず、大きな個体だけを選り分けて採取。

調査はここからが肝心で、採取したドブガイや魚の体長を一匹一匹、ノギスを用いて丁寧に計測し、メモしていきます。

一通り調査を終えた一行は、歩いて「きんたい廃校博物館」へ。廃校を活用した地域の交流施設の一角に、きんたい(=高安地域におけるニッポンバラタナゴの呼称)を始めるとする地域の淡水魚が展示されているのです。

(同館で行われたサカナズキさんによる淡水魚鉛筆画展の様子はこちら↓)

展示を眺めながらスタッフの方々とおしゃべりをして、この日は解散。研究会スタッフの知識と熱意、そして子ども達のパワーに圧倒された半日でした。

人と自然とが共存する里山でこそ生息できる貴重な淡水魚。地域に根差し、次世代を担う子どもたちへとバトンを渡しながらマクロな視点で生息環境を守ろうとする研究会の活動には尊敬の念を抱かずにはいられません。

この度は貴重な経験をありがとうございました。

サケ科魚類研究会

山形県内をフィールドとして活動するサケ科魚類研究会(SSA)の公式ウェブサイト。サケ科魚類研究会(SSA)は、漁業者、行政といった既存の利害関係者ではなく、「魚好き」という新たな立場から、サケ科魚類やそれらが生息する河川を良い形で未来に繋ぐことを目標に活動しています。

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